六話 ベトナムの食文化

滞在先はCHU HOTEL。 ビーチまで徒歩3分、赤茶と白が織りなす外観。 フロントに飾られたアンティークのピアノと船模型、壁に散るアートは大人のリゾート情緒を漂わせる。 室内はダブルベット、エアコン、ファン、広い浴槽、充実のアメニティ、13,000円弱とは思えない快適さだった。

翌朝、ハムとの待ち合わせ時間までミーケービーチを散歩した。ホテルを出ると2,3分で、ヤシの木、ビーチパラソル、ビーチハウスが姿を現す。そしてビーチは大きな道路に面しその奥に連なる山々。ワイキキビーチを彷彿させるロケーションに驚かされた。

待ち合わせ時、ハムは彼女と一緒に迎えに来てくれた。 ホーチミンからダナンまで本当にガイドにくるのか、昨日までの心配は何だったのか。彼の楽しげな笑顔の前にすべて消え去り、昼食に出かけた。

ホテルを出た瞬間、雨季の終わりを告げるかのような強い日差しと湿った空気が肌を焦がし、額に汗がじわり。 日中はうろつくのを避けたいと近くの屋台へ入った。

「オーメイ!」

屋台では耳慣れぬベトナム語の歓声が、空気を震わせる。日本では祭りの一幕に過ぎぬ屋台、この国では日常の大衆食堂、家族や友が集う憩いの場となっていた。

ここで、少しベトナム食文化に触れてみよう。

食事は、自炊より外食中心。主食は日本と同じ米飯、おかずは野菜、魚介類、肉類と宗教的な問題で食事制限のある人は少なく、お酒を楽しむ人も多い。

代表的な食べ物は麺類のフォー。高級ホテル、レストラン、屋台などいたるところで食べられる。米の麺を牛骨や鳥がらスープに入れ、ハーブ類(パクチ、シソなど)と生野菜(もやし、ニンジンなど)の具材を載せるのが典型的だ。

味は地域によって異なり、北部(ハノイ)は塩ベースで具材少なめのさっぱり系、南部(ホーチミン)は甘みと具材多めのコッテリ系、各自お好みでテーブルにあるライムのしぼり汁や唐辛子を加え、食べる。

見た目は日本のうどんやきしめんに似ている。食べ方はフォーに限らず箸やスプーンを卓上の紙でふいてから使う。これは日本人が衛生面に細かいというわけではなく、現地のベトナム人も同じようにする。

また軽食ではバイミーが有名。朝、昼食時になるとあちらこちらに一畳くらいの小さなバイミー専門の屋台が現れる。

内容はフランスパンに切り込みを入れ、サラミやハム類、そして野菜を入れたサンドウィッチ。パンの表面を軽く焼いたものが多く、外はカリッと中は柔らかく食べやすい。フランスパンの理由は、ベトナムは昔フランスの植民地だったからだと思料する。

その他では、つけ麺のブンチャー。肉の香ばしさ、スープの酸味がたまらなく美味しい、僕一押しのベトナムフード。

あと鍋も多く食べられている。種類は鶏、牛、海鮮、日本とほぼ同じ。ただ日本で考えられないのはその内容、例えば鶏の場合は一羽、半身が丸ごと入っておりトサカや手はそのまま、かなりグロテスクだ。薄暗い中で食べるときは何を掴んでいるのかわからない、これぞ闇鍋。ベトナムの食は驚きと感動に満ちている。

私たちはこの日の昼食、ブンチャーと冷えたビールに舌鼓を打ちながら午後の予定を話し合い、全員一致で初日は世界遺産、ホイアンへ行くことにした。

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